歴史と由来

ナイアシンアミド(ニコチンアミド)はビタミンB3(ナイアシン)のアミド体。1937年、コンラッド・エルヴェーヘムがペラグラ(ナイアシン欠乏症)の治療にニコチン酸が有効であることを発見。ペラグラは「4Dの病」(dermatitis, diarrhea, dementia, death)として恐れられていた。

スキンケア成分としての研究は1990年代から本格化。P&Gの研究チームがナイアシンアミドのスキンケア効果を精力的に研究し、Olay(オレイ)ブランドに配合。

日本では2018年にシワ改善の効能、さらに美白(メラニンの蓄積を抑える)の効能でも厚労省承認を受けた。一つの成分で二つの薬用効能が認められるのは極めて珍しい。コーセーの「ONE BY KOSE」シリーズが代表例。

科学的背景

ナイアシンアミドの多面的な作用:

1. セラミド合成促進 → バリア機能強化
2. コラーゲン産生促進 → シワ改善
3. メラノソーム転送阻害 → 美白(メラノサイトから角化細胞へのメラニン輸送を阻害)
4. 抗炎症 → 赤みの軽減
5. 皮脂分泌調整

体内ではNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の前駆体として機能。NAD+はエネルギー代謝に不可欠な補酵素であり、近年の「長寿研究」でも注目されている。

知られざるトリビア

・ナイアシンアミドとナイアシン(ニコチン酸)は混同されがちだが別物。ナイアシンは摂取時に顔の紅潮(フラッシング)を引き起こすことがあるが、ナイアシンアミドではこの副作用は起きない。

・「レチノールとナイアシンアミドは一緒に使えない」という都市伝説がネット上に広まっているが、化学的根拠は乏しい。現在の製剤技術では併用に問題はないとされている。

限界と論争

ナイアシンアミドは低刺激だが、高濃度(10%以上)では一部の人に赤みや刺激が出ることがある。

また、その万能性ゆえに「何にでも効く」と過度な期待を持たれがちだが、各効能の発現には十分な濃度と継続使用が必要。

参考文献

・Elvehjem CA, et al. "Relation of nicotinic acid and nicotinic acid amide to canine black tongue." J Am Chem Soc. 1937.
・Bissett DL, et al. "Niacinamide: A B vitamin that improves aging facial skin appearance." Dermatol Surg. 2005.