歴史と由来

アルブチンは1852年にコケモモ(Arctostaphylos uva-ursi、和名ウワウルシ)から初めて単離された。植物学名の「uva-ursi(熊のブドウ)」は、熊がこの実を好んで食べたことに由来する。

ヨーロッパでは伝統的に尿路感染症の民間薬として用いられてきたが、美白成分としての応用は日本主導で進んだ。1989年、資生堂がアルブチンの美白効果を報告し、厚生省(当時)から医薬部外品の美白有効成分として承認された。

α-アルブチンとβ-アルブチンがあり、α-アルブチン(江崎グリコが酵素合成法で開発)はβ-アルブチンの約10倍のチロシナーゼ阻害活性を持つとされる。

科学的背景

アルブチンはハイドロキノンのグルコシド。皮膚内でチロシナーゼ酵素の活性部位に競合的に結合し、チロシンからDOPA、DOPAキノンへの酸化反応を阻害する。結果としてメラニンの産生が抑制される。

ハイドロキノン自体は強力な美白剤だが、皮膚刺激性や白斑リスクがある。アルブチンはハイドロキノンにグルコースが結合した構造で、穏やかに作用し安全性が高い。

知られざるトリビア

・日本は世界最大の美白化粧品市場。アルブチン、ビタミンC誘導体、トラネキサム酸が三大美白成分とされる。

・コケモモはフィンランドの国民的ベリーでもあり、ジャムやジュースとして日常的に消費されている。美白効果は意識されていない。

限界と論争

アルブチンの美白効果は「これから作られるメラニンを抑制する」予防型であり、既にできたシミを消す(還元する)効果は限定的。

体内でハイドロキノンに分解される可能性も指摘されているが、通常の化粧品使用量では安全性に問題はないとされている。

参考文献

・Maeda K, Fukuda M. "Arbutin: mechanism of its depigmenting action." J Pharmacol Exp Ther. 1996.
・Sugimoto K, et al. "Synthesis of α-arbutin." J Biosci Bioeng. 2003.