歴史と由来

セラミドの発見は1884年、ドイツの化学者J.L.W.トゥジチェクが脳組織から脂質を単離し「cerebroside」と命名したことに遡る。「cerebro(脳)」に由来する。

セラミドが皮膚科学の文脈で注目されるようになったのは1980年代。Peter Elias博士らの研究チームが、角質層の「レンガとモルタルモデル」を提唱し、セラミドがモルタル(角質細胞間脂質)の主成分であることを明らかにした。

角質細胞間脂質の構成:セラミド約50%、コレステロール約25%、脂肪酸約15%。このバランスが崩れると肌のバリア機能が低下し、乾燥肌やアトピー性皮膚炎の原因となる。

日本ではこんにゃく由来のセラミド(グルコシルセラミド)が経口摂取用サプリメントとして1990年代後半から市場に登場。花王の「キュレル」シリーズ(1999年〜)はセラミドケアを前面に打ち出した先駆的ブランド。

科学的背景

ヒトの皮膚には12種類のセラミドが存在する(CER[EOS], CER[NS], CER[NP]など)。

セラミドの合成経路:
1. セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)によるセラミド前駆体の合成
2. 表皮顆粒層のラメラボディに蓄積
3. 角質層でグルコシルセラミドからβ-グルコセレブロシダーゼにより遊離セラミドへ
4. 角質細胞間で規則正しいラメラ構造を形成

このラメラ構造が「水と油のサンドイッチ」となり、水分の蒸散を防ぐ。アトピー性皮膚炎患者ではセラミド(特にCER[EOS])が減少していることが報告されている。

知られざるトリビア

・こんにゃくには米の7〜15倍のグルコシルセラミドが含まれている。こんにゃくが「美肌食材」と呼ばれる背景にはこの事実がある。

・「天然型セラミド」「ヒト型セラミド」「植物性セラミド」「合成類似セラミド」は効果が異なる。最も肌のセラミドに近いのはヒト型セラミド(バイオセラミド)。

限界と論争

塗布したセラミドが角質細胞間脂質のラメラ構造に組み込まれるかについてはまだ議論がある。角質表面の保湿効果は確認されているが、深部のラメラ構造を再建するかは不明。

経口摂取のセラミドも同様に、消化管で分解された後に皮膚のセラミド合成に利用されるメカニズムは完全には解明されていない。

参考文献

・Elias PM. "Epidermal lipids, barrier function, and desquamation." J Invest Dermatol. 1983.
・Imokawa G, et al. "Decreased level of ceramides in stratum corneum of atopic dermatitis." J Invest Dermatol. 1991.